トラは行動範囲の広い動物として知られている。
このことは、密林に潜むという習性を持つこの野生ネコの観察をいっそう難しくしている。
同じ大型野生ネコのライオンと比較してみよう。
タンザニアのセレンゲティーに棲むライオンについて調べたごく最近のデータでは、
雌5頭の集団で50平方キロである。
一方シベリアタイガー(アムールトラ)の場合、行動圏は200〜1000平方キロに達する。
インドトラ(ベンガルトラ)でも、およそ50平方キロになる。
単独で行動することの多いトラ(1頭)の行動圏が、
サバンナのような開けたところに棲む雌ライオン5頭の集団とほぼ同じなのだ。
上の写真は、インドのバンダフガル国立公園で撮影したパトロール中の雄トラである。
どうしてトラの行動圏は広いのか? 理由の一つは、トラの意外な習性にある。
獲物を待ち伏せして狩るというイメージが強いトラだが、
実は果敢に探し回ることの方が多いのだ。
トラはなかなか働きものなんですね。
さて、ここで質問を出します。行動圏が広い理由はもう一つあります。
次の(A)を埋める形で答えてください(漢字だと2字、ひらがなだと3字です)。
「行動圏の広さは( A )の量に比例している。
( A )の密度が少なければ、多くの運動量を要求されるというわけだ。」
むずかしいですか。では難易度を下げますね。
次の(B)がわかれば正解にします。Aと同義語です(ひらがな2字、漢字だと1字)。
「この傾向(上の「 」内に示した理由)は、環境の変化によって強化された可能性がある。
つまり( B )になる動物の減少によって、探し回らざる得なくなったということだ。」
インドのトラは1日に20キロくらい歩き回って狩りを行う。
獲物になるのは、シカやレイヨウ(カモシカの仲間)、イノシシが中心だが、
サルも襲うことがある。シベリアタイガーはサケやマスなどの魚類も上手に捕らえる。
えさがないときは鳥類や爬虫類、カエルやバッタまでつかまえるという。
ということで、答えは「えさ」、ちなみに( A )は「獲物」。
大型野生ネコのえさになる動物の数が、アフリカのサバンナに比べて、
アジアの森はぐんと少ない。これは間違いなく事実です。
次回はトラの「食事の作法」について、実例を挙げながら解説してみようと思います。
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