トラはかつて、西はカスピ海、東は朝鮮半島、北はシベリア、南はインドネシアまで分布していた。
ほんの60年ほど前までバリ島にもトラがいたという事実は、一般にあまり知られていない。
この分布にともない、カスピトラ、アムールトラ(シベリアトラ)、アモイトラ、ベンガルトラ、
マレートラ、スマトラトラ、ジャワトラ、バリトラの8つの亜種に分類されてきた。
「亜種」って何? という方のために……
亜種というのは、同じ形態的特徴を持つ地域個体群のことをいいます。
つまりトラの場合は、身体の大きさや縞模様などが
棲んでいる地域によってかなりちがうというわけです。
20世紀初頭には、地球上に
10万頭ものトラがいた。ところが・・・・・・・
1940年代にまずバリトラが絶滅、1970年代にカスピトラが絶滅、
1980年代にはジャワトラも姿を消した(まだ数頭生き残っているという噂もある)。
残った5亜種もすべて絶滅へのカウントダウンに入っているといわざるを得ない。
現在、世界に生息しているトラの総数は――わずか5000頭程度。
※IUCN(国際自然保護連合)は、5000〜7000頭と推定している。
最もトラの密度が高いのは、インドである。
インドには世界のトラの5割以上が生息しているのではないか、
ともいわれているが、その確証はない。
2001年のことだが、
私がインド中央部のあるトラ保護区で、現地のナチュラリストに聞いた話では、
インドトラの実数は1000頭以下ということもありうる、ということだった。
さて、ここで簡単な算数の問題です。
トラのこの100年間の減少率を求めよ。
100,000頭が5000頭になったということは?
おわかりのように、答えは、
減少率95パーセント。
これがもしヒトの社会なら、どういうことが起こるか考えてみてください。
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