潜入ルポ

密猟者からサイを守れ! レンジャーのパトロールに同行する

その角が秘薬として東アジアの諸国で珍重されてきたため、サイの密猟が後を絶たないという。
現在世界中のサイを全部合わせても1万5000頭以下。
特にアジアのサイは激減して、3000頭以下しかいないという。
アジアの一角サイの大半が生息するインド北東部のはし、アッサム州を訪ねた。
1985年、インドで最も早く世界自然遺産に登録されたカズィランガ国立公園は、希少種の動物の宝庫だ。
早朝4時。総計120ヶ所の監視所に泊り込んだレンジャーたちが、銃を携えて密猟パトロールを開始する。
密猟者と鉢合わせになれば銃撃戦も覚悟しなければならない。過去5年間で30人の密猟者を逮捕しているが、
9人のレンジャーが怪我を負った。しかし努力の甲斐あって昨年は密猟ゼロを達成したという。
一方、当のインドサイといえば、私が望遠レンズを向けたとたん、猛烈な勢いで突進!

危ない!すわ、ジープごと大破か・・・。

寸前で、くるりとサイはUターン。なんとか事なきを得た。それにしても、こんなに気性が荒いのは、生まれつきなのか、
それとも密猟者に狙われ続けたせいなのか。いずれにせよ、サイの「聖域」は、油断のならないところである。




『週刊文春』カラーグラビア 05年5月19日号/「インドサイ、最後の楽園」より


● 取材秘話

カズィランガはミャンマーとの国境にある。しかるに、入域はちょっとやっかいだ。
コルカタのインディア・エアラインで航空券を購入したとき、
「ジョルハットですか?許可書を持ってますか?」と訊かれた。
入域許可書までは必要ない、と事前に調べて知っていたので、
「そんなものはいらないはずだ」と答えると、
窓口の係りのヒトはちょっと腑に落ちない顔をして、受話器を手にとった。
どうやら許可がいるのか否か、照会しているらしい。
結局、当人の取り越し苦労だったのだが、カズィランガはインド国内線最大手の航空会社の
オフィシャルワーカーをもってしても、気を遣わざるを得ない国境地帯なのである。
現にこの私もジョルハットに降り立つと、警察署に直行。それがここでの決まりなのである。
取材というとなにかとやかましいので、一応「観光」という名目にしようと、ガイドと事前に
打ち合わせていたので、それで通す。
待たされること3時間。しかし結局、「尋問」は目的地と滞在目的を尋ねられただけ。
3分で終了した。それにしても、われながら「象祭りを見るためです」とはよく言ったいったものである。
実際、この取材のときには、カズィランガのサイを始めとする野生動物を守るための
デモンストレーションが、行われていた。
地域の子供たちも参加していて、それはなんとも微笑ましい光景なのであった。